筋膜・軟部組織

膝関節の動きと膝関節の矯正とスクリューホームムーブメント

🦵 膝関節の運動学:基本構造と動き
① 膝関節の構造

膝関節は主に 3つの関節 から成り立っています👇

名称 説明
大腿脛骨関節(だいたいけいこつかんせつ) 太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨)で構成。膝の曲げ伸ばしの主動部分。
膝蓋大腿関節(しつがいだいたいかんせつ) 膝のお皿(膝蓋骨)と大腿骨の関節。お皿の動きが膝の滑らかな屈伸を助ける。
上脛腓関節(じょうけいひかんせつ) 脛骨と腓骨の間の関節。小さいが膝や足首の連動に関わる。
② 主な運動:屈曲と伸展
🔹 屈曲(曲げる動き)

主動筋:ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)

協働筋:腓腹筋、薄筋、縫工筋

関節運動:脛骨が大腿骨の後方へ転がりながら滑走(roll & glide)

🔹 伸展(伸ばす動き)

主動筋:大腿四頭筋(特に内側広筋が膝の安定に重要)

関節運動:脛骨が前方へ転がりながら滑走

③ 膝関節の軸運動

膝関節は単純な「蝶番」ではなく、**回旋(ねじれ)**も伴う関節です。

🔸 屈伸運動に伴う回旋(スクリューホームムーブメント)

膝を完全に伸ばすとき:
→ 脛骨が外旋(外向き) してロックされる(安定する)

膝を曲げ始めるとき:
→ 脛骨が内旋してロックが解除される(動き出せる)

🔹これを スクリューホーム・ムーブメント(Screw Home Movement) と呼びます。

④ 靭帯と半月板の役割
組織 役割
前十字靭帯(ACL) 脛骨が前方に出すぎるのを防ぐ
後十字靭帯(PCL) 脛骨が後方に下がるのを防ぐ
内側側副靭帯(MCL) 外からの力に抵抗(内反防止)
外側側副靭帯(LCL) 内からの力に抵抗(外反防止)
半月板(内側・外側) クッション作用・関節安定・荷重分散
⑤ 荷重と運動連鎖

膝の動きは、股関節と足首の影響を強く受けます。

状況 運動連鎖の傾向
立位で膝が内側に入る(ニーイン) 股関節の内旋・足の過回内が関与
O脚傾向 股関節外旋・足首の回外が関与
歩行中 荷重脚では膝が軽く屈曲し、股関節・足首が協調して衝撃を吸収
⑥ 膝関節の可動域(正常範囲)
動き 正常範囲 備考
伸展(まっすぐ) 0°(人によっては-5°) 反張膝では過伸展あり
屈曲(曲げる) 約135°〜150° 日常生活では120°あれば十分
回旋(屈曲位で) 外旋約30°、内旋約15° 伸展位では回旋はほぼ不可
⑦ 臨床・矯正のポイント

膝単体よりも「股関節・足関節」をセットでみる

膝蓋骨の滑走性(動きのスムーズさ)を確保

内側広筋の活動を促す

膝関節周囲の筋バランス(内外側)を整える

① 膝関節の構造とねじれ(スクリューホームムーブメント)

膝関節は単純な蝶番ではなく、屈伸+回旋の複合関節です。
この回旋運動が「スクリューホームムーブメント(Screw Home Movement:SHM)」です。

🔹 仕組み

膝が 伸展(まっすぐになる) とき
 → 脛骨が外旋(外向き) しながら「ロック」される。
 → 大腿骨の内側顆が長いため、最後の10〜15°で自然にねじれる。
 → 関節が安定し、立位保持が省エネルギーになる。

膝が 屈曲(曲がる) とき
 → 脛骨が内旋(内向き) して「ロック解除」される。
 → 動的運動(歩行・階段など)で可動性を確保。

② SHMの異常と歪み

スクリューホームムーブメントが適切に働かないと…

異常 原因 結果
外旋ロックしない 内側広筋の弱化、外側優位 膝蓋骨外方偏位、O脚傾向
ロック解除できない ハムストリングの短縮、関節包の硬さ 屈曲制限、痛み、可動域低下
異常回旋 股関節・足首のねじれ伝達 膝蓋骨のズレ、半月板負担増大

→ よって、膝矯正ではSHMの再教育(正しいねじれを誘導) が非常に重要になります。

③ 潤滑理論(関節潤滑の生理)

関節がスムーズに動くには、関節液(滑液) と 関節軟骨 の潤滑機構が正常に働く必要があります。
膝関節は「二重潤滑理論(dual lubrication theory)」で説明されます。

1️⃣ 境界潤滑(boundary lubrication)

動き始めなど「圧力が高い・動きが少ない」場面で作用

主成分:ヒアルロン酸・ルブリシン(PRG4)

関節表面をコートして摩擦を減らす
→ 長時間の立位などでも関節を保護

2️⃣ 流体潤滑(fluid film lubrication)

滑液が「薄い液膜」となって表面間を滑らせる

動きがあるときに作用

関節液が**ポンプ作用(筋収縮・関節圧変化)**で循環する

💡つまり、
関節を正しい方向に動かすことで、滑液がポンプ循環し潤滑力が回復します。
これが膝矯正で“動かして整える”理論的根拠です。

④ 矯正の実際(SHM+潤滑理論に基づくアプローチ)
🔹 Step 1:関節包・周囲筋をゆるめる

目的:可動域確保と潤滑促進

ハムストリング・腸脛靭帯・大腿直筋を軽くストレッチ

膝蓋骨モビライゼーション(上下・左右)
→ 滑液循環が促進され、関節内圧が均等化

🔹 Step 2:スクリューホームムーブメント誘導(矯正操作)

目的:膝のロック・アンロック機構の再教育

手技例(仰臥位)

膝を軽く曲げ(約30〜40°)、脛骨を軽く内旋→外旋と交互に動かす

徐々に伸展位へ誘導しながら、外旋方向(ロック方向)を軽く補助

伸展終末で「脛骨の外旋+下方圧」を軽く保持(2〜3秒)

再び軽度屈曲し、内旋方向でロック解除
→ これを数回繰り返す

※ 目的は「正常なねじれ感覚」を関節に再教育させること。
※ 無理に押し込まない(靭帯・半月板に負担)

🔹 Step 3:潤滑・代謝を促す軽運動

伸展・屈曲をゆっくり繰り返す

特に伸展終末で“滑らかな止まり方”を意識

温熱(ホットパックなど)と併用すると滑液粘度が低下し動きが改善

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